盆栽を始めてみました
山口にUターンしてから、庭の一部を家庭菜園スペースにして野菜や花を育ててみたり、
バラの美しさと香りに魅了されてデビッド・オースチンのバラを育て始めてみたりして2年ほどが経ちました。

園芸の面白さに気がついていろいろ育ててきたのですが、そのうちに盆栽の世界の面白さにも気がついて最近はいろいろと育ててみたりしています。
もともと京都で長く暮らしていたこともあり、そこで目にしてきた美しい日本庭園の景色を自分の手でも作れないかな
といろいろミニチュア作成などをやってみたりしたことがきっかけでした。





このときに小さなもみじを購入して育てていたのですが、小さい器の中でもしっかりと育つもみじを眺めていると、「すごいなぁ」と感じるのでした。そこから他に素材は何かあるのかなといろいろと探してみたことが盆栽に興味を抱くきっかけになりました。
今はもみじのほかにも真柏や黒松、五葉松、欅なども育てています。



といってもまだまだ全然わからないことが多く鉢に植えてあるだけ。バラや家庭菜園をしながらなので空いた時間ができたときに世話をする感じです。
本当はもっと時間をかけてじっくりできるとより楽しめるのだと思います。
そんな感じで始めた盆栽の世界ですが、とても奥が深く日々気が付くことが多いのです。



毎日見ていると変わっていないように見えるのに、気が付くと前よりも大きくなっていることに気が付いたり。時間をかけてゆっくりと育てていくことの楽しさを感じる毎日です。水やりをしながらいろいろ見てみる時間も心が落ち着きます。
そんな盆栽を始めたばかりのわが家の様子を記録として残しておきたいと思います。
盆栽といえば、一昔前はおじいちゃんの趣味というようなイメージがありました。
しかし、近年では外国人の方にもとても人気が出ているのだそう。



輸出額も大幅に伸びているみたいです。



ここで一度「盆栽」の辞書的意味を確認してみます。
【盆栽(bonsai)】
・『精選版 日本国語大辞典』
鉢などに植え、幹や枝を趣あるように整えて観賞する草木。
・『広辞苑』
陶磁器の鉢などに草木を植栽し、樹姿を整えて自然の雅趣を表現し、観賞するもの。
・『明鏡国語辞典』
観賞するために枝や幹に手を加えて育てた鉢植えの樹木。
・『新明解国語辞典』
観賞用に育てた、鉢植えの草木。
これを自分なりに解釈すると、
鉢に植えた草木を育てながら観賞すること
という感じでしょうか。



下からじっくりと覗いてみると、まだ小さい木なのに自然のなかに育つ大木のような世界観を感じることができたりとても楽しいです。
何年か後の姿を想像しながら日々の世話をしているのでした。
自宅の近くに盆栽の素材を購入することのできるお店があまりないため
香川県高松市にある盆栽園「一樹園」さんから購入してみることにしました。



購入したのは真柏と五葉松の素材の苗木です。
真柏は樹齢8年の苗木です。
真柏の素材に関しては購入するのは2回目になります。


そして五葉松は樹齢3年のものを購入しました。





写真と同じものが届くというわけではなく、同等品が梱包されて届きます。午前中に注文したら翌日の午後には届きました。
届いた素材がこちらです。


【3年目宮島五葉松の5個セット】


【これからどのように育てていこうか楽しみが広がります】



こちらは8年目の真柏の素材です。


【8年目の真柏の素材】


【触るとしっかりと根付いているのがわかります】



真柏には針金がけも施されていて、基本的な樹形は整えられていました。素材としてたくさん揃ったので、これから大切に育てていこうと思います。これらが大きくなるのには何年もかかると思います。自分はまだ30代なので、あと50年以上はその変化を見ることができるのかなと考えると楽しみです。
1年ほど前から少しづつ植えてみたりして育てているものがいくつかあります。



恥ずかしながら、植え付けてからほとんど樹形を整える作業などができていないです。これから勉強したいと思います。


【老爺柿の池泉回遊式庭園仕立て】



老爺柿は雌雄異株の植物のため、結実させるためには雄木が必要になるのだということも育てているうちに知りました。そもそもこの木が雄木なのか雌木なのかわからないのですが、花の様子で判断できたりするのだそう。来年確認してみたいと思います。


【もみじの盆栽】


【もみじの寄せ植え盆栽】


【紅鳥花の根上がり風】



春頃にたくさんの紫色の花が咲いて綺麗でした。一緒に飾っている石は近所の海岸で拾ってきたものを添えています。盆栽に合いそうな石を探すのも楽しいですね。
そのほかにもいくつかあるのですが、また後日ご紹介したいと思います。



少ない土の中でしっかりと根を張っていく草木の姿を眺めているだけでも心が落ち着きますよ。
全然手入れができていないのでボサボサの状態ですが、これから一つづつ剪定などしてみたいと思っています。


【わが家の庭にある一本の伊吹の木】
わが家の庭に昔から植えてある伊吹があります。



定期的に庭師の方に手入れしていただいているのですが、下から見上げるとその枝ぶりが美しいなぁといつも感じます。盆栽でもこんな感じの雰囲気に仕立てることができればいいなぁなんて思ったりしているのでした。
盆栽と合わせて水石(すいせき)という世界も存在します。
学生時代に龍安寺のすぐ近くに住んでいたこともあってか、昔から枯山水の世界観がとても好きで
これが水石に興味を持つようになるきっかけになった気がします。



どちらかというと水石の世界から好きになり、そこから盆栽の世界に入っていったという順番の方が正しいかもしれません。わが家には床の間が2つあるので、そこに飾っても絵になる水石や盆栽をいつか自分の手で見出していきたいなぁと考えています。
水石についての意味も確認してみたいと思います。
【水石】
・『精選版 日本国語大辞典』
水盤に入れたり、盆の上に庭園や景色を模して配したりする石。
・『広辞苑』
室内に置いて観賞する自然石。
・『新明解国語辞典』
水盤に入れたり盆の上に水石を模したりする石
まとめると
水盤などの盆の上に自然の石を配し、自然の景色に見立てて鑑賞するもの
という意味になるでしょうか。
あまり水石について書かれた本が少ないのですが、
その世界についてはYouTubeでも身近に感じることができます。



盆栽家の森前さんのお話はとてもわかりやすくて参考になります。自分は水石の中でも滝に見立てた滝石が好きなのですが、いつか自分の手で見つけ出したいなぁなんて考えながら探したりする時間も楽しいです。
盆と砂と石で自然風景を表現できる世界観がとても趣がありますね。
水盤はすでに購入しているのですが、そこに据える石や添配を手にいれることができていません。
なのでこれからいろいろと探してみて、床の間に飾れるようなものができれば良いなと考えています。



盆栽と合わせて水石の世界もしっかり楽しみたいと思います。
かつて、作家の谷崎潤一郎が著書『陰翳礼讃』の中でこのように綴っていました。
美と云うものは常に生活の実際から発達するもので、暗い部屋に住むことを餘儀なくされたわれゞの先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った。
(中略)どうも近頃のわれゞは電燈に麻痺して、照明の過剰から起る不便と云うことに対しては案外無感覚になっているらしい。
谷崎潤一郎 『陰翳礼讃』 中公文庫 1975年



陰翳の中に美しさを見出し、その美しさの目的に添うように陰翳を利用してきた自分たちの先祖の美的感覚が、次第に世の中が便利になるにつれて薄れていくことを危惧していたのだと感じます。
身の回りの草木や自然石を、自分たちの生活の場に取り入れて楽しんできた世界観。
このような盆栽や水石が生み出す美しさの中にも谷崎の指摘に通じるものがあるような気がするんですよね。



じっくりと時間をかけて仕立てていく良い意味での不便さも、タイパ重視などと言われる現代の忙しい世界を矯正してくれているかのような気もします。便利になる世の中で、実は失われている美しさというものがあるのではないかという視点はこれからも大切にしたいものです。



そういう意味では、日本庭園や日本画についても今後勉強してみたいななんて思います。どんどんと世界が広がっていきますね。
盆栽はまだはじめたばかりでわからないことだらけです。



しかしとりあえず形から入って、走りながら考えるのが自分のいつものやり方。これからも盆栽や水石についても綴っていきたいと思います。
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